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高座の向こう側

第32回 SWA、サヨナラの向こう側

[2012年1月13日]

 

 

 あけまして、おめでとうございます。

年明け早々に、初笑いを迎えるという日本人は一体何人くらいいるのだろうか。

カウントダウンのオールナイトライブが東京・大阪とも恒例行事となっている。

東京では立川志の輔師匠、立川生志師匠。

大阪では笑福亭福笑師匠、桂あやめ師匠など

若手からベテランまでが勢揃いしては、今年最後の大暴れと称し、お祭り騒ぎ。

そして年が明けてからもまた、今年最初の大暴れと叫び、来場客と共に賑やかに。

笑いが福を呼び込むかのごとく、

縁起のいい一年の幕開けだと思えるライブであろう。


 そんな2012年も、落語界は何かと話題が豊富である。

春には、まず東京・落語協会で春風亭一之輔さんが21人抜きで真打昇進。

落語芸術協会では昔昔亭健太郎さん、春風亭柳太さん、昔昔亭笑海さん、

瀧川鯉橋さん、笑福亭里光さんの5人が、

それぞれ真打に昇進することが決まっている。

時を同じくして大阪では、桂こごろう師匠が二代目・桂南天を襲名。

夏はご存じ、桂三枝師匠が亡き師・桂文枝という大名跡を。

そして秋には再び東京で、桂平治師匠が師・桂文治の名を襲名する。

また同じく秋に、28人抜きの大抜擢で古今亭菊六さん、

同時に古今亭朝太さんが真打昇進を果たす。

東西での襲名ラッシュがここ数年続いている中、

真打昇進も相次ぐ2012年。

今年も活気ある1年になりそうな予感がする。


 賑やかになりそうな2012年だが、2011年は寂しい出来事もあった。

衝撃を与えたのは、やはり立川談志師匠の他界だろう。

あれだけ多くの報道が取り上げたということは、

談志師匠がいかに世の中にインパクトを与え続けていたかが、改めてよくわかる。

そして、もう1つ。SWAの活動休止発表だ。


 SWAといえば、この連載でも何度も登場してきた。

リーダーの春風亭昇太師匠を筆頭に、

インパクトかつメルヘンチックな新作を生み出す三遊亭白鳥師匠。

笑いと泣かせの緩急自在に、演出家の顔をも持つ偉才の柳家喬太郎師匠。

自身の肉体をも武器にし、体育会系らしい動きのある新作が得意の林家彦いち師匠。

四者四様ともいうべき4人の師匠方が手に手を携え、

個性的かつ斬新な新作を数多く世に送り出してきた。


 そんなSWAが、最後のでっかい花火を打ち上げるべく

敢行した「SWA FINAL」公演。

昨年11月29日〜12月4日の6日間、

下北沢・本多劇場で行なわれた「SWA FINAL」。

そして12月5日。

よみうりホールで行われた「SWAクリエイティブツアー First Last」。

最後というのが名残惜しいほどに、

過去稀にみるインパクトかつソウルフルな公演であったといえよう。


 私が足を運んだのは、初日・11月29日の「SWA FINAL」の昼公演。

SWAの公演というのはいつも疑問が纏わりつく。

公演は常に満員札止め。だが、この日は平日昼過ぎ。

客層は20代〜40代の若年層多数。

「仕事は?」ときっと誰もが思っていることだろう。

当の師匠方も感じているのだから。

どういう理由であれ、有休だろうが、ズル休みだろうが、

仕事以上にSWAの公演を優先するくらい、

SWAに魅力がある事実に変わりはない。

ましてや、これでしばらく見れなくなるというのだから、尚更であろう。


「先輩、何やってんですか!?」

「何?お前の知り合いか?」

「サークルの先輩っすよ!」

「あ〜柔道部の?」

「いや、実はあやとり部でして

「何だよ、そのサークル!」


万引き犯が、サークルの先輩だったという衝撃の再会から始まる「再会のとき」。

公演の一番手、喬太郎師匠の新作書き下ろしだ。


「どうすか?先輩。俺のサンマの開き、ラップの仕方

「斉藤くん……ラップの巻き方、甘いぞ〜」

「すいませ〜ん、先輩」

「お前、あんま迎合すんなよ!万引き犯だぞ!」


 「甘いぞ〜」など、女性をかわいく演じさせたら天下一品の喬太郎師匠。

巷の女子高生にも、大学生にも早変わり。

噺家として演じる顔と、自分をどう見せるかを考える演出家の顔を併せ持つ。


「お疲れさま〜」

「シゲルさん!声変わりすぎ!チビ玉なんですから!」

「チビ玉って俺、いくつだと思ってんだよ!62だぞ!早く子役雇ってくれよ!」


△柳家喬太郎師匠

 

 

 旅回りをしている大衆劇団を舞台にした「泣いたチビ玉」を

披露したのは彦いち師匠。

 座長に「息子を一人前に」と頼まれたシゲルさん。

本番でも演技のできない芝居下手な若旦那に対し、シゲルさんは


「子役をなめんなよ!」


舞台上で一喝した、シゲルさんの荒療治。

その一言で開眼した若旦那を見届け、「子役は2人いらない」と

シゲルさんは劇団を去っていく


動きがあり、フットワークを活かした新作を数多く生み出し、得意としている師匠。

今回の新作は、そんな師匠が得意とする作風とはテイストをガラリと変えた作品。

人情味をエッセンスに加えた噺に挑んだ。

今後の彦いち師匠の作風にも、さらなる期待が窺える。


「ん!んっ!」

「何?塩?口で言えばいいじゃない!」

「伝わってんじゃねーか!」

「それは私の勘がいいからなのっ!」


△林家彦いち師匠  

 

 テンションの高い夫婦の会話から始まる昇太師匠の新作は「心をこめて」。

「ん!」などと、会話ではなく体の動きで指示する夫。

「夫婦なんだから、会話したいの!」

夫の行動に嫌気がさし、そう本音をぶつける妻。

こういう夫婦、意外に多いのではないだろうか。

長年連れ添って、お互いを理解しすぎているがゆえに、

大切なことを見失いがちな関係。

やがて外出先で妻の本音を理解した夫は、帰宅して


「はい、ポテトサラダ!」

「これ、不味いんだよ!てことは、お前が作ったな!」

「お惣菜屋で買ったやつよ!」

「お惣菜屋!?なんでこんなに不味いんだよ!」

「私はお惣菜屋のお兄さんが好きなのよ!」

「なんだよ、それ!」


 お互いが本音をぶつけあうようになればなるほど、ヒートアップ!

終始テンションを下げることなく、ラストまで駆け抜けた昇太師匠の芸は圧巻である。

掛け合い漫才のように繰り広げられる夫婦のやりとりもまた、

昇太師匠らしく爆笑のオンパレードだ。


 トリを飾ったのは白鳥師匠。

白鳥師匠らしいストーリー重視の「鉄砲のお熊」。

女相撲をモチーフに、幼少時代のおみつ、長吉、時次郎の3人の運命が交錯する。

時次郎を助けるために、長吉に相撲勝負を挑むおみつ。

長吉に勝ったものの、石で額を割られてしまい、その傷が残ることに。


 そして10年後。女相撲の大関・お熊として成長したおみつ。

幼い頃の歌舞伎好きが高じて、売れっ子の歌舞伎役者・中村夢之丞となった時次郎。

盗人の親分・マムシの権蔵に成りあがった長吉。

時を経て、再び3人が顔を合わせることになる


 勧善懲悪が実に痛快な噺だが、随所に白鳥師匠らしいギャグを織り交ぜながら。

また座布団を敵に見立てながら格闘をしたり、

落語らしさを超越したところも実に愉快。

この師匠の新作は、いつも何が起こるか、どういう方向へと導いていくのか。

想像を遥かに超えるので、見る前からドキドキさせてくれる。


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△三遊亭白鳥師匠 

 

 8年間の活動に、一時休止という終止符を打ったSWA。

落語熱に火をつけた一因ともなり、東京のみならず、

全国各地でそのインパクトを残した。

8年の間に、4人の師匠の人気が不動のものとなったことも、

それぞれがこのSWAを通して研鑽を重ねたことも大きい。


SWA第1章は昨年、幕を下ろした。

だがまた、いつか。第2章の幕が上がることを人々は待ち望んでいるに違いない。

それまで…“さよなら、またね